Blog
2021.05.31 12:00 PM 投稿:by スタッフ@さるハゲ
紙つぶて第十九回「美しい、おいしい」
絵を描いていると「美しい」ってなんだろう?と思う。 
「美しい」という表現が適切か分からないけど、とりあえず色を選ぶ、線を選ぶ時、指針が欲しくなるのは確かだ。 
そこは青く塗るのと赤く塗るのとどちらが美しいか? どのくらいの大きさが美しいか? 
いつも手探りだ。


例えば夕日を写真で撮ろうとする。夕日ってのはたいてい「美しい」ものだ。 
だけどシャッターを押した時「決まった!!」と思える時がある。 
山のシルエット、雲のかかり方などが微妙に響きあった時。あれは数多くの美しい夕日の写真の中でもさらに「美しさ」が増したってことだろうか? 

そう思うと「美しい」って食べ物の「おいしい」と似てるように思えてくる。 
料理も、スパイスや食感やさまざまなバランスが響きあって「おいしさ」を増す。 
味が決まった時も色が決まった時も頭の中では同じ「パチッ」とパズルが完成したような音が聞こえる気がする。 

さらに人や地域によって好みが分かれる「おいしさ」だけど、一方で世界中に通用する基準があって、その多様性と普遍性の両方を持つあたりも、「美しさ」と似ている気がする。 
「美しい」も「おいしい」もきっと人間がよりよく「生きる」ことに深く根差してるんだろう。 

 頭で考えた結果でなく、体の奥から「決まった!!」と声がする絵が描けたらキモチいいだろうな。 

中日新聞 夕刊 2020.6.1 掲載
この記事のトラックバックURL
http://www.saruhage.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/903

コメントを書く
名前

アドレス(URL)

コメント
※管理者が不適切と判断した発言は断りなく削除することがあります。ご了承ください。