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しりあがり寿presents 新春!(有)さるハゲロックフェスティバル2010
開催日時 2010.1.10
カテゴリー  イベント
場所 新宿LOFT
主催 有限会社さるやまハゲの助
2010年1月10日、歌舞伎町。地下深い新宿LOFTで12時間にわたって繰り広げられたのが、しりあがり寿が主催する「さるハゲロックフェス2010」だ。内輪のみの小さな宴会だった「さるハゲ歌合戦」に端を発する「さるフェス」も、新宿LOFTに会場を移して本格的ロックフェスとなってから2年目。「もっともっと混沌としたフェスにしたい!」というしりあがり寿の希望通りに、さらにスケールが大きく、豪華かつ得体の知れないものになった。
しりあがり寿の事務所「さるやまハゲの助」の関係者と、しりあがり寿の知人、友人によってラインナップの大半が構成される「さるフェス」。ロックフェスと名乗っているものの、披露されるのは音楽だけに留まらず、プロと素人が混在する“何でもアリ”のフェスである。今回は前年を上回る全41組が出演。ロック、クラシック、テクノ、フォーク、マンボ、タンゴなどさまざまな音楽ジャンルを網羅するだけでなく、ポエトリーリーディングやトークショーなど音楽と関係のないジャンルも加えられた。イベントの最初を飾る「ご挨拶」からして、日本チャンピオンの実績を持つビートボクサー(ボイスパフォーマンス)のKAZと大人計画の俳優・顔田顔彦による手品の共演である。オープニングの時点からして「ロックフェス」でもなんでもないあたりが「さるフェス」の自由さを象徴しているといえる。

今回しりあがり寿たっての希望で出演がかなったのが、御歳78才の伝説的詩人・谷川俊太郎。ピアニスト、作曲家でもある息子・谷川賢作を従えてのポエトリーリーディング——というとなにやら文化的な雰囲気に思われるかも知れないが、放送禁止用語すらも圧倒的な詩心で包んでしまう“ことばの力”に会場は大喝采。年齢を重ねた渋みと破天荒なお茶目さを併せ持つパフォーマンスは「感動」という言葉が相応しいものだった。そしてナマの破壊力という点ではまさしく「ロック」だった。

同じく、しりあがり寿が「是非出演して欲しい」と説き伏せての出演となったのが『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザインであまりにも有名な安彦良和。アニメ、コミックの評論家ササキバラ・ゴウの進行で「ガンダム」から「ヤマト」まで貴重な裏話を披露。30代、40代の年齢層が多い観客にとってもまさにストライクゾーンであり、大御所のユーモアをたたえたトークに大勢の人々が耳を傾けていた。

ひょんな繋がりから実現したのが、異色のイカ天バンドとしてこれまた30代から40代に鮮烈に記憶されている「スイマーズ」の20年ぶりの再結成。相変わらずの競泳パンツ姿での若々しいパフォーマンスは20年の歳月を経たとはとても思えない。また前回のフェスから安齋肇率いる工作音楽ユニット「オバンドス」のメンバーとしても参加しているパラダイス山元は、90年代のカルト深夜番組「ラテン専科」に出演していた「パラダイス山元とラテンムードデラックスfeaturing園田ルリ子」をこの日のために再結成! ルリ子嬢はこれまた昔と変わらぬ水着姿でキュートに歌声を披露。スイマーズともどもタイムスリップしたような錯覚にとらわれる瞬間だった。

意外なところで直前にすべり込みで出演が決まったのが、自ら発明した楽器オタマトーンを引っ提げてステージ上に現れた明和電機。実は開催数日前にツイッター上に「さるフェスに出たい」という書き込みがあり、そこからあれよあれよという間に「サイモンガー・モバイル」と「パラダイス山元とラテンムードデラックス」へのゲスト参加が決定したのだ。そのやりとりがすべてツイッター上で行われたというのも面白い。

その他、野宮真貴がベーシストを務めるロックバンドNLUKA SORCAやサエキけんぞうなど今回は有名人枠が妙に充実。関係者すらも「豪華過ぎる」とおののいたラインナップになったが、内幕を明かせばどれもこれも自然発生的に実現したものばかりで、不思議な縁を感じさせた。

また有名人枠が充実したとはいえ、もちろんさるフェスの中核を成すのはさるハゲ事務所に出入りする素人たちによる好き放題のパフォーマンス。小坊主姿の女の子たちが楽器演奏(主に笛)を披露する「チンネンマンネン」は、今年もマイペース過ぎるパフォーマンスで観客を唖然とさせ、しりあがり映像作品の振り付けも担当している中里順子がボーカルを務めるヘビメタバンド「BLACK CRIMSON」は本気と爆笑コントが紙一重なステージが圧巻だった。

さらに今年の新機軸となったのが、メインステージ、セカンドステージでの演目以外に、新宿LOFT内のラウンジスペース「深海」を使って行われた盛りだくさんな催し物。占い、鍼灸やといった実用的なものから「みんなでみかんを食べる」といったシュールなもの、会場からの同時中継ラジオまで、ただでさえイベント全体に漂う“ごった煮”感を増すものばかり。「居心地がよくてずっと深海にいた」という人、「なんだか濃すぎて近づけなかった」という人、さまざまな反響を呼びつつさるフェスの新名物になりそうなパワーに満ちた空間だった。

前年と比べてとりわけ印象的だったのが、体感比1.5倍くらいと思われる観客の多さ。深夜に及ぶ12時間の長丁場をずっと参加してくれた人も少なくなかったようで、お目当ての演目だろうがなかろうが、なんでもまるごと楽しもうという空気がフェスを否が応なしに盛り上げる。さるフェス恒例になりつつある出演者も観客も一緒に行われる打ち上げも、相当数用意されたテーブルに座れない人が大勢出るほどの混雑。また近いアンテナを張っている人が集まってくるからなのか、当日の会場で「知り合いと数年ぶり、十数年ぶりに再会した」という声が複数聞かれたことも開催側としては嬉しい限りだ。

それにしても「なんだかわからないけど楽しいもの」というしりあがりの理想に一歩ずつ近づいていることが実感される一夜だった。年々「さるフェスに出演したい!」という声も増えており、イベントとしての認知度も確実に上がっている模様。今後のさるフェスがどう発展、変化を遂げていくのか楽しみだ。

出演者(五十音順)
赤い板前と人魚、うっとりカレー(ケータリング)、S.G.G.K弦楽四重奏団、HB、エレキコミック、小野瀬雅生、OBANDOS(安齋肇&工作員)、顔田顔彦、KAZ、COSMIC7、御当地アイドル!!キンジョリーナ・セピア、是枝みきと佐藤美由紀、サイモンガー・モバイル、サエキけんぞう&Boogie the マッハモータース、THE GEESE、THE CLEARASILS、死顔、親戚、スイマーズ、Slash Bunches、谷川俊太郎&谷川賢作、TEAM紅卍、チンネンマンネン、チンネンマンネン(増量版)、剛連合、脳天気商会、のぐお&メホソ兄弟、NLUKA SORCA、ハギヌン、花井美理&アーバンギャルズ、バナナシスターズ、爆音戦隊スンプレンジャー・根性丸!、パラダイス山元と東京ラテンムードデラックスFeaturing 園田ルリ子、パンチの効いたブルース、美人寿司(ケータリング)、PEVO、Poolside de ちえみ、BLACK CRIMSON、マキタスポーツ、まじまんが、蒸し鶏と私、明和電機、安彦良和vsササキバラ・ゴウ新春雑談!、Richard Hendrix Band

(written by murayama a.)

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